誰もが知る「くまのプーさん」。独特でほのぼのするストーリーとキャラクターが魅力の大人気ディズニーアニメです。
2018年にそのタイトルやノスタルジックなイメージビジュアル、感情をくすぐるストーリーで日本でも大きな話題になった「プーと大人になった僕」を今更ながらに観ました!
この映画は、公開時に誰の心にもある「夢と希望に満ちていた子どもの頃」を思い出させる内容で、多くの大人の心をノックアウトしトレンド入りとなったのを覚えていますか?
その内容は単なる「ノスタルジーを誘うほのぼのファンタジー」ではありません。大人だからこそ楽しめる「プーさん」の世界観のシュールな魅力があります。
詳しくレビューしていきます!
「ほのぼの」していないストーリー
一度は見たことのある「プーさん」。ほのぼのしたイラストとストーリーは心をほんわかさせてくれますよね。
ただし、「プーと大人になった僕」はちょっと予想を裏切る「ほのぼの」してなさでした。
大人なら心当たりのあるエピソードの数々
「プーと大人になった僕」というタイトルやジャケットから想像される温かいイメージに反して、そのストーリーはただ「ほのぼの」しているわけではなく…。
どちらかというと、辛口で厳しい大人の社会の現実をまざまざと見せつけ、その対称としていつまでも変わらない「100エーカーの森」を描くことで大人の感情を揺さぶってきます。
嫌味な上司、面倒なご近所付き合い、仕事と家庭に挟まれて追いつめられるストレス…大人なら心当たりのあるエピソードが満載です!
それぞれの描写はかなり生々しく、忙しい現実を生きる大人のメンタルに容赦なく突き刺さります。
現代社会に突き刺さるメッセージ
大人の心を辛辣にえぐるストーリーには、単に「大人って大変だよね、子どもの頃は楽しかったね」と同情を誘うだけではない、現代社会に突き刺さるメッセージが込められています。
仕事に追われる日々、休むことを許さない社会、離れていく家族の心…そんな現実の中でクリストファー・ロビンが「大人」として導き出した現実的な答えは、ただただ大人たちを追いつめていく今の社会への皮肉も含まれていそうですね…。
「夢と希望に満ちていた」というかけがえのない子ども時代と向き合い、その一方で「自分はもう大人になった」という現実からも目をそらさず、家族と一緒に今を生きていく方法を考えて決断を下したクリストファー・ロビンの姿は、大人の心にグッと来るのではないでしょうか。
「大人」だからこそ分かる笑いどころの数々
一緒に見た息子は頭の上にハテナをいっぱいにつけていましたが、年齢を重ねて人生経験を積んだからこそ分かる笑いどころが満載です!
また「分かる!!」といったような共感エピソードも散りばめられています。
クリストファー・ロビンvsプー
ストーリーには深いメッセージが込められている「プーと大人になった僕」ですが、その内容はあくまでファンタジーコメディとして軽快に仕上がっていて、「大人」だからこそ分かる笑いを届けてくれます。
なかでも「クリストファー・ロビンvsプー」のらちの明かない戦いは、どちらの心情も理解できる大人だからクスっと笑えるシーンの連続です。
大人の事情を抱えたクリストファーのもとに突然現れて、クリストファーの忙しさを理解できず延々と絡んでくるプー、そしてなんとかそれから逃れようとするクリストファーの不毛な会話劇。
無邪気にクリストファーを慕うプーは間違いなくかわいいのですが、一方で「事情を分かってくれず延々と寄ってくる」という行為が大人としてはいかに困るかも想像できて、クリストファーの困りっぷりに苦笑してしまいます。
ウロウロし続けてうっかり家具や食器を壊しまくるプーの姿は、「大人を困らせる天才」っぷりを象徴するようです。
誰かに似てる…て、息子に似てるんですね!笑
よく考えるとくせ者揃いなキャラクターたち
そもそも、あらためてふり返ると「プーさん」のキャラクターたち自体が、子ども向けファンタジー作品としてはかなりのくせ者揃い!
プー以外の、ピグレットやティガー、イーヨーなどのキャラクターたちがロンドンで見せる振る舞いも爆笑ポイントの連続です。
そのなかでも特にインパクト大なのがロバのイーヨー。そのネガティブっぷりは、一周まわって尊敬してしまいます。
水深が膝下の川から起き上がることすらせず「僕はもうおしまい」といって流され続けたり、ロンドンで人目を逃れて木箱に隠れたら「暗くてせまくて僕にはお似合い」といきなり悲観し出したりと、マイナス思考は怒涛の勢いを見せます。
他の面々もやたらと皮肉屋だったり不意にグサッと刺さる発言をしたりと、ただのかわいいぬいぐるみではありません。
この「子どもに分からせる気ないよね」と言いたくなるブラックでシュールな笑いのセンスも、大人が楽しめるポイントです。
最後に
「プーと大人になった僕」は、痛烈なメッセージ性とくせのあり過ぎるブラックユーモアがあるからこそ、大人も本気で笑って感動できるファンタジーコメディに仕上がっていました。
ただ感傷に訴えかけるだけでなく、皮肉と笑いをもって現実に触れながら希望を見せるからこそ、大人が納得できる物語になっています。
そんな「大人のためのファンタジー」として、必見の名作と言えるのではないでしょうか。
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